映画「アバウト・レイ」のあらすじや感想を紹介!アイデンティティが揺さぶられるヒューマンドラマ

肉体と精神の性差に悩む少女に、隠された家族の真実が突きつけられる。届かない理想とままならない現実との間で揺れるいたいけな心の叫びに、たまらなく感情を動かされる。

あなたは、“自分の在り方”に疑問を感じたことがあるだろうか。

映画「アバウト・レイ」のあらすじ

主人公レイは、16歳の高校生。肉体的な性別は女性だが、精神的には男性と認識しているトランスジェンダーとして生まれた。

心と体で食い違う性別に思い悩み、苦しんできた人生の中で、レイは“男性として生きていく”という決断をする。しかし、レイはまだ未成年。家族の賛成が得られなければ、戸籍上の性別を変えることもできない。

後戻りのできないレイの決断を、手放しで飲み込むことができない母。やや楽観的な視点で物事を捉えることの多い祖母。

レイに理解を示しつつも、味方になりきることができない、祖母の同性のパートナー。ひとつ屋根の下に暮らす4人は、家族として乗り越えるべき壁を前にしていた。

映画「アバウト・レイ」の感想レビュー

オススメ度:8/10 男として、女として、人として。アイデンティティが揺さぶられるヒューマンドラマ

『アバウト・レイ』は、ただマイノリティについて考えさせられるだけの映画ではない。

「LGBT」という言葉は、近年になってこそ世間に認知されてきたが、理解を得るという面ではまだまだ課題の多い分野である。

主人公レイも、LGBTのうちのT(トランスジェンダー)に属していながら、一番身近であるはずの家族からなかなか理解を得られないという辛い立ち位置にいる。

男性になりたいという願望を持つレイは、メンズライクなファッションに身を包み、スケートボードを乗り回し、筋力トレーニングにいそしんでいる。

しかし、“本物の”男性の腕力には到底かなわないし、女性に恋愛感情を抱いても、友情止まりで相手にしてもらえない。どちらにもなりきれない自分に歯がゆさを感じているのだ。

弱冠16歳のレイが抱えるにはあまりに膨大すぎる問題が次々に湧いてくる。その末にレイが吐き出す感情の奔流に、観客は息を呑み、圧倒される。

そして、「自分はレイのように、強い決断を下すことができるだろうか」と考える。そこには、性別や人種を超えた、“人としての在り方”を問う自分の姿が表れるはずだ。

主演エル・ファニングの、輝かしいまでの演技力

この映画で一番に観てほしいのは、主人公レイを演じたエル・ファニングの素晴らしい演技力である。

トランスジェンダーの少女という役どころは、素人が想像するだけでも演じるのが難しそうだし、16歳という絶妙な年齢設定も演技の難しさに拍車をかけている。

自分が16歳だった頃のことを思い出してみてほしい。「大人は何もわかってくれない」とか、「世の中はどうしたって良くならない」などと考えてはいなかっただろうか。

そんな自分に誰かが優しい言葉をかけようとすると、うわべだけの言葉には騙されないと撥ねつけていなかっただろうか。

そんないつかの自分たちとレイは、同じなのである。今となっては、面倒なものを抱えていたと振り返る人もいるだろうが、エル・ファニングはその“面倒さ”を実に見事に演じ切っている。

脇を固める実力派女優陣

主演のエル・ファニングだけでなく、主人公レイを取り巻く家族を演じたキャストにも注目してほしい。

不器用ながらも懸命にレイを愛する母親役のナオミ・ワッツは、今作の中心人物でもある。シングルマザーとして必死にレイを育ててきた母親の葛藤や疲弊、苦悩を、時には静かに、時には激しく魅せてくれる。

重く捉えられがちな今作の主題を、明るく軽快なテンションで彩ってくれるのが、祖母役スーザン・サランドンだ。

年長者として含蓄のある言葉を放つこともあれば、不用意に、かつ軽々しく発言して娘や孫を怒らせることもある。そのパートナー役リンダ・エモンドと共に、今作の緩衝材的な役割を果たしている。

終盤でレイが直面する事実と、16歳があげた“叫び”

映画終盤で、レイは家族にまつわるある事実に直面する。そこで、今まで感じてきた歯がゆさや、ままならないあらゆる物事、家族に抱いていた愛情、あるいは憎悪、そういったものがすべて、悲痛な叫びとなってレイの喉から飛び出してくる。

ここまでレイの物語を追ってきた観客は、その叫びにあらゆるものを感じ取るはずだ。かつて16歳だった自分を思い出して、あるいはレイの境遇を想って、激情を吐き出すレイの姿に背筋を震わせるのだ。

筆者はそのシーンで思わず涙した。同時に、改めてエル・ファニングの演技力に感服した。レイと同じ苦悩を抱えている人にも、そうでない人にも、あの叫び声は等しく響き渡ることと思う。

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まとめ

トランスジェンダー、と聞くだけで、難しそうな映画だとか、自分には理解を示せないジャンルの映画だと決めつけてしまう人もいるかもしれない。しかし、『アバウト・レイ』はそういった映画ではない。

これは16歳の高校生の成長の物語であり、それを取り巻く家族の物語である。

レイの成長はよくできたサクセスストーリーではないし、家族は皆理解があって優しい理想的な人間ではない。しかし、だからこそ説得力があって、心を揺さぶられるだけの感情が生まれる。

秀逸なヒューマンドラマの一作として、是非手に取ってみてほしい。

監督…ゲイビー・デラル

キャスト
レイ…エル・ファニング
マギー…ナオミ・ワッツ
ドリー…スーザン・サランドン
フランシス…リンダ・エモンド

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